東日本大震災から13年。

13年前の3月11日も、フローレンスではいつものように利用会員さんのご自宅で病児保育を行っていました。

震災があったあの日、病児保育の現場で何が起こっていたのか。

そして何を学び、どんな対策に繋がっているのか。

2020年に掲載した『フローレンスの病児保育の災害対策について』の記事を最新情報に一部変更し、ご紹介します。

2011年3月11日、病児保育の現場で起こっていたこと

2011年3月11日。

このツイートの後、予約が1件増えて、この日の病児保育のご依頼件数は15件。

胃腸炎、風邪、気管支炎、インフルエンザといった病気でのお預かりでした。

いつもと同じようにレスキュー隊員(保育スタッフ)がご自宅にお伺いし、代行受診に対応し、ご飯を済ませ、病状回復にむけてお子さんたちがお昼寝をしていたころ。

14時46分、地震が発生。

東京都心の震度は5弱でした。事務局のスタッフは揺れが収まった後、飯田橋のオフィスビルから避難場所としていた東京大神宮に集まり、レスキュー隊員に向けて安否確認のメール送信を行いました。代表の駒崎からも、利用会員の方(親御さん)に向けてツイートを発信。

レスキュー隊員と連絡が取れ、お子さんの安否が確認できるとすぐ、親御さんに向けてメールをお送りし、無事の情報を伝えました。

中にはご登録のメールアドレスがPCアドレスの親御さんもいらっしゃいましたので、携帯電話からも確認できるよう、Twitter(現:X)も利用して発信を行いました。

「あらゆる手段を使って安否情報を取り、親御さんに伝えるべく必死だった」と当時対応していたスタッフは語ります。

地震当日、事務局で安否確認を担当していたスタッフの青柳(写真左)
隊員としてお子さんを保育していたスタッフの小湊(写真右)

地震発生から4時間近く経過した18:30頃、病児保育中のすべてのお子さんの無事を確認。

しかし、交通網の麻痺でなかなかご帰宅になれない親御さんもいらっしゃいます。

フローレンスの病児保育は通常18時30分までのお預かりです(※)が、この日は無事にお子さんを親御さんのもとに引き継ぐまで、保育を継続。
(※夜間オプション契約(別料金)により、最大20時まで延長可)

最後の一人まで引き継ぎができたことを確認し、事務局スタッフも徒歩で帰宅の途につきました。自宅に到着できたのは翌日午前2時頃だったそうです。

3.11からの反省

後日、震災時の状況について、レスキュー隊員(保育スタッフ)にヒアリングを行いました。

タワーマンションの42階で保育を行っていた隊員は、お子さんと一緒に階段で1階まで降りたこと。

16時までのお預かりだったお子さんのお宅では、親御さんの帰宅が遅くなることを予想して、おやつを少しずつ食べさせていたこと。

余震が来るたびに、お子さんを抱きしめて安心させていたこと。

親御さんに無事お子さんを引き渡し、電車が止まっている中、8時間歩いて帰宅したこと。

ヒアリングを通して浮かんできたのは、事務局スタッフ、レスキュー隊員一人ひとりがお子さんの命を守るために懸命に考え、行動した姿でした。

「命を預かる」仕事を全うしてくれたレスキュー隊員に感謝の気持ちを伝えながらも、同じように事務局スタッフでもふりかえりを行うと、様々な改善点が見つかりました。

当時、避難訓練は実施していたけれど、半期に一度だったこと。

レスキュー隊員に対して行っていた災害対策は笛を持たせることくらいで、保育中の連絡手段は私用携帯での通話のみ。

連絡がつかないレスキュー隊員の保育先に、事務局スタッフが徒歩で向かったりもしていました。

いざというときにメールを使ったり、災害用伝言板を使うスキルは当時は存在していなかったのです。

13年前からアップデートし続ける災害対策

こうした数々の反省から、フローレンスの病児保育では様々な対策を講じてきました。

1.業務用携帯の貸与

震災前は、レスキュー隊員(保育スタッフ)の個人の携帯を使用して連絡を取っていました。

仕事の依頼もFAXで行っていたのです。

セキュリティや通信費の自己負担についても課題を感じていたため、2014年より全てのおやこレスキュー隊員(保育スタッフ)に業務用のスマートフォンを貸与しています。

導入当初は使い慣れていないために操作に戸惑うおやこレスキュー隊員もいましたが、研修を重ねて全レスキュー隊員が利用できるよう体制を整えてきました。

現在は、レスキュー(病児保育)中の連絡は専用のシステム上で実施。全おやこレスキュー隊員が同じシステムを使い、業務報告ができるようになっています。

2.防災訓練を毎月1回実施

災害はいつ発生してもおかしくありません。

新しいスタッフの入社もあることから、防災訓練の頻度を毎月1回実施しています。
病児保育中、親御さんとおやこレスキュー隊員をつなぐサポートセンターのスタッフが訓練の運営を担い、改善を続けています。

訓練の実施頻度を上げたことで「久々に使うから、わからない」「マニュアルを見ないとわからない」といったことがなくなりました。

3.経過報告欄、WEB171、災害用伝言ダイヤルの活用

当日病児保育を利用している親御さんへ向けた安否連絡手段として、経過報告欄を活用しています。

経過報告画面のイメージ

またNTTが提供している災害用伝言板(WEB171)や災害用伝言ダイヤル(171)も活用。

毎月1日、15日に体験利用ができることから、なるべくこの日に合わせて防災訓練を実施しています。

4.全社員に安否確認を行うシステムを導入

安否確認システム「安否確認2」を導入し、勤務中のスタッフの安否確認を行います。

離れた場所にいるスタッフの安否情報を一括で把握します。

5.X(旧:Twitter)・Faceboookを利用しての安否情報発信

※2024年3月現在、経過報告欄と災害伝言板での運用を基本的に行っておりますが、FacebookやX(旧:Twitter)等でも安否情報を発信する場合がございます。

もしも災害が発生した際には、電話回線の混雑が見込まれます。

上記の安否確認方法を通して得られた安否情報は、個人情報を伏せた状態でフローレンスのSNSで発信していきます。

利用会員の皆さんへのお願い

フローレンスの病児保育では、利用会員の皆さんに下記のお願いを実施しています。

1.緊急避難場所の登録

フローレンスの病児保育では、その日のシフトや依頼状況によってスタッフの保育先をコーディネートしており、毎回違うスタッフがお伺いします。

お住まいの地域に土地勘のないスタッフがお伺いすることもございます。

おやこレスキュー隊員(保育スタッフ)は、ご自宅にお伺いする当日に、地図上で緊急避難場所と避難経路の確認を行うよう指導をしております。

万が一大規模な災害が発生し、ご自宅での待機が難しくなった場合は、隊員がお子さんとともに緊急避難場所に登録された場所への避難を行いますので、必ずご登録をお願いいたします。

会員専用サイトでの入力画面

2.防災用品(非常持出袋)の準備

災害発生時に避難が必要になった場合、速やかに避難が行えるよう、(お子さんごとに)非常持出袋のご用意をお願いしております。

持ち出し袋の中身

・(お子さんの年齢によって)おむつ・おしりふき

・お子さんの着替え、下着類、タオル

・おやつ

・飲み物

・災害時緊急連絡先シート

非常持出袋は、フローレンスの病児保育ご利用時に限定して用意するのではなく、お子さん用のふだんからの災害対策として準備しておくことをおすすめしています。
お子さんの成長にあわせて着替え、おやつは随時見直しを行っていただくと、利用当日の朝の引き継ぎがスムーズです。

また、災害時緊急連絡先シートは、初回ご利用時にご用意いただければ、次回以降もひきつづきご利用いただけます。

ご協力をどうぞよろしくお願いいたします。

もし、今、病児保育中に災害が発生したら?

フローレンスでの病児保育中に災害が発生した場合は、災害時緊急連絡先シートに記載のある通り、対応いたします。

大切なお子さんの命をお預かりするため、日々おやこレスキュー隊員保育スタッフ)、事務局スタッフともに、リスク管理の研修や防災訓練を重ねております。

安心安全の保育のためにも、利用会員の皆さまのご理解、事前の準備にご協力のほど、どうぞよろしくお願いいたします。


フローレンスでは随時入会を受付しております。

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